【簿記3級】「現金過不足」の仕訳の意味・問題を解くポイントについて徹底解説します!

簿記3級

「現金過不足」の問題は簿記3級の第3問決算の問題でよく出題されます。

一方で、何となくイメージはあるものの、いまいちよく理解できていないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「現金過不足」の仕訳の意味から、処理のポイント、簿記検定の出題についても解説しています。

「現金過不足」の処理のポイントは?

「現金過不足」の仕訳は?

簿記検定ではどのように出題される?

「現金過不足」勘定を使った処理のポイントは3つ!

本記事で説明する「現金過不足」勘定を使った処理のポイントは、次の3点です。

どれも重要なポイントなのでしっかり頭に入れておきましょう!

ポイント
  1. 「現金」の残高は必ず実際有高に合わせる(実際有高は動かせないその時に一時的に使うのが「現金過不足」勘定。
  2. ただし、「現金過不足」は仮勘定(一時的な勘定)のため、最終的には他の勘定に振り替えて、残高を0にしないといけない
  3. 仕訳は、次の2段階で考える。
    ステップ①】現金の不一致が判明した時(まだ不一致の原因は不明)
    【ステップ②】不一致の原因が分かった時(または最後まで結局分からなかった時)

そもそも「現金過不足」勘定を使う場面とは?

ポイント

「現金過不足」を使う場面
「現金」の帳簿残高と実際有高(金庫の中の実際の現金の額)が不一致だった時。

日常、現金に関する取引を頻繁に行っているうちに、仕訳の処理漏れや誤りなどで、現金の帳簿残高(仕訳の積み上げ)と実際有高(金庫の中の実際の現金の額)が合わないことが出てきます。

この時に、「現金過不足」を使って、「現金」勘定の帳簿残高を実際有高に合わせます

なぜ、実際有高に合わせるかというと、そうするしかないからです。

現金が実際には200円しかないのに、帳簿残高が900円となっていたら、現金700円をポケットマネーから金庫に入れて帳簿残高に合わせることはできないので、帳簿残高700円減らすことになります。

実務では、「現金実査」といって、金庫の中の現金が実際にいくらあるのかを一日の現金取引がすべて終わった段階で毎日チェックします(決算の時も当然やります)。
この作業があることで、帳簿残高と実際有高の不一致があれば気付くことになります。

「現金過不足」の仕訳は2段階!

では実際に「現金過不足」の仕訳はどんなタイミングで、どのように処理するのでしょうか?

「現金過不足」は、次の2段階で処理します。

ポイント

【ステップ①】現金の不一致が判明した時(まだ不一致の原因は不明)
【ステップ②】不一致の原因が分かった時(または最後まで結局分からなかった時)

【ステップ①】現金の不一致が判明した時(まだ不一致の原因は不明)

ポイント

【ステップ①】現金の不一致が判明した時(まだ不一致の原因は不明)
「現金」勘定の帳簿残高を実際有高に合わせる。その時の相手科目を「現金過不足」勘定とする。

例えば、次の通りだとします。

例題期中において現金実査をしたところ、実際有高は200円しかないのに「現金」勘定の帳簿残高が900円になっていた。(帳簿残高が700円多い状態)

このまま放置すると、「現金」勘定の帳簿残高は間違った残高900円のままなので、なんとか「現金」勘定の帳簿残高を、金庫の実際有高200円に一致させたいわけです。

そこで使うのが「現金過不足」勘定という仮勘定(一時的な勘定科目)です。

この場合の処理は次の通りです。

  • 「現金」勘定の帳簿残高を700円減らせば、実際有高の200円に一致するので、「現金」を帳簿上減らすために、貸方「現金」700円を持ってくる。
  • 今は何で実際有高との不一致が起きたのか原因がわからないので、相手勘定(借方)はとりあえず「現金過不足」という仮勘定(一時的な勘定科目)を持ってくる。
借方金額貸方金額
現金過不足700現金700

この「現金過不足」は借方にあるので、費用の役目を果たします。(「何かよくわからない費用」によって現金が減った、という仕訳)

逆に、仕訳でもし「現金過不足」勘定が貸方にあったら、収益の役目を果たします。(「何かよくわからない収益」によって現金が増えた、という仕訳)

この仕訳を切ることによって、とりあえずは「現金」勘定は実際有高200円に一致しました。

なお、「現金過不足」勘定は「費用・収益の役目を果たす」と記載しましたが、厳密にはあくまで仮勘定なので、収益・費用、資産・負債のいずれの区分にも該当しません。

(ステップ②で説明しますが、最終的に残高0になって残らないのであまり深く考えなくてもOKです。わかりにくければ仮の収益・費用だと思ってもらえれば大丈夫です。)

【ステップ②】不一致の原因が分かった時(または最後まで結局分からなかった時)

ポイント

【ステップ②】不一致の原因が分かった時(最後まで結局分からなかった時)
「現金過不足」勘定は仮勘定(一時的な勘定)なので、最終的には他の勘定に振り替えて残高を0にしないといけない

①現金の不一致が判明した時の処理で、「現金」勘定は実際有高200円に一致してきれいになりました。

ところが、「現金過不足」勘定が今700円借方残高として残ってしまっています。

「現金過不足」勘定は、仮勘定(一時的な勘定)のため、最終的には他の勘定(本勘定)に振り替えて、残高を0にしないといけない、というルールがあります。

なので、不一致の原因が分かった時や、決算を迎えても結局最後まで原因が分からなかった時は、「現金過不足」勘定を取り消す(残高を0にする)ため、次のような仕訳を切らないといけないことになります。

借方金額貸方金額
○○○×××現金過不足700
△△△×××□□□×××

※「○○○」「△△△」「□□□」は勘定科目名、×××は金額

不一致が生じた原因によって、この「○○○」「△△△」「□□□」にいろいろな勘定科目が入ってきます。

例えば、不一致が生じた原因が下記だと判明したとします。

例題決算日において、実際有高との不一致が生じた原因が下記の通りと判明した。

  • 旅費交通費300円、受取利息100円の計上漏れ
  • 受取手数料200円の二重計上
  • その他の理由は不明

計上漏れがわかったなら計上しないといけないですし、二重計上だったなら取り消さないといけない(貸借逆仕訳)ですね。

なので、まずは下記の処理をします。

  • 旅費交通費(費用)300円・受取利息(収益)100円を増やす
  • 受取手数料(収益)200円を減らす
借方金額貸方金額
旅費交通費300現金過不足700
受取手数料200受取利息100
〇〇〇300

そうすると、借方に何か300円計上しないと、貸借が一致しないですね(「(借方)○○○ 300」の部分)。

ここに、「内容がわからない損失」を表す「雑損」を持ってきます。

  • 貸借差額で借方に雑損300を計上する
借方金額貸方金額
旅費交通費300現金過不足700
受取手数料200受取利息100
雑損300

逆に、貸方に何か計上しないと貸借が一致しない場合は「雑益」(「内容がわからない収益」)です。

要は、雑損・雑益は貸借差額で計上するということになります。

ステップ①、②の仕訳でやりたいこと

さて、ここで、ステップ①の仕訳とステップ②の仕訳をもう一度見てみましょう。

このステップ①の仕訳とステップ②の仕訳を足し合わせるとどうなるでしょうか?

ステップ①の仕訳
借方金額貸方金額
現金過不足700現金700
ステップ②の仕訳
借方金額貸方金額
旅費交通費300現金過不足700
受取手数料200受取利息100
雑損300
ステップ①+②の仕訳
借方金額貸方金額
旅費交通費300現金700
受取手数料200受取利息100
雑損300

①の仕訳の借方「現金過不足」勘定700円と②の仕訳の貸方「現金過不足」勘定700円が相殺されて0になりました。

「現金過不足」が間に挟まれていたからわかりずらくなっていた仕訳が、①と②を足し合わせることで、「現金」勘定を修正している仕訳(実際有高に合わせるために「現金」勘定の帳簿残高を700円減らしている仕訳)だということがよりはっきりしますね。

ポイント

現金過不足の処理でやりたいこと:
ステップ①、②の仕訳を通して、収益や費用の処理漏れや処理誤りを修正することで「現金」勘定をあるべき金額(=実際有高)に修正する。

例えば、雑損300円は、「300円の(内容不明の)費用を計上することで「現金」勘定の帳簿残高を減らしている」処理になります。

ところで、「現金過不足」勘定は原因がわからない時の一時的な勘定科目なので、最後は消えてなくなってしまいます。

そのため、決算の時に新たに実際有高との不一致が判明した場合で原因不明の場合は、あえて「現金過不足」勘定を使わなくても、最初から「雑損」・「雑益」を使うことが多いです。(もちろん、不一致が判明した段階ですぐに原因がわかればその勘定科目を使います。)

簿記検定で出題される「現金過不足」(精算表の問題など)

簿記3級では、「現金過不足」は、第3問の決算の問題(精算表の問題等)でよく出題されます。

決算の問題では期中の処理がひとまず終わった段階(=決算整理前残高試算表)なので、ステップ①:現金の不一致が判明した時の仕訳はもう処理済み、というケースが多いです。(「現金過不足」勘定を使って、「現金」勘定の帳簿残高は実際有高に合わせてある。)

なので、この場合は、決算整理仕訳では、「現金過不足」勘定(一時的な仮勘定)をほかの勘定に振り替える処理(ステップ②の処理)を求められています

ポイント

簿記検定でよくあるパターン:

【ステップ①】現金の不一致が判明した時の処理⇒期中処理済みのため対応不要(決算整理前残高試算表で反映済み)
【ステップ②】不一致の原因が分かった時の処理⇒決算整理仕訳で処理必要

よくある勘違いとして、期中でステップ①の処理が終わっているのに、またステップ①の処理をやって、下記のようにしてしまう方がいます。

  • 「現金」勘定を動かしてしまう。
  • 「現金過不足」勘定を新たに計上してしまう。(「現金過不足」勘定の残高を増やしてしまう。)

「現金」勘定は期中で処理して実際有高に合わせてあるので、もう動かす必要はないですね。

また、くどいようですが、「現金過不足」勘定は、一時的な勘定のため、決算整理前残高試算表で「現金過不足」勘定の残高が残っていたら、決算整理仕訳で他の勘定科目に振り替えて残高0にしないといけないので、逆に「現金過不足」の残高を増やしてしまったらダメです。

「現金過不足」まとめ

「現金過不足」の処理は理解できたでしょうか?

ここで、あらためて冒頭で説明した「現金過不足」のポイントを見てみましょう。

ポイント
  1. 「現金」の残高は必ず実際有高に合わせる(実際有高は動かせないその時に一時的に使うのが「現金過不足」勘定。
  2. ただし、「現金過不足」は仮勘定(一時的な勘定)のため、最終的には他の勘定に振り替えて、残高を0にしないといけない
  3. 仕訳は、次の2段階で考える。
    ステップ①】現金の不一致が判明した時(まだ不一致の原因は不明)
    【ステップ②】不一致の原因が分かった時(または最後まで結局分からなかった時)

現金過不足の処理は、3級の決算整理仕訳の中では比較的よく出てくる仕訳なのでしっかり理解してマスターしましょう!

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