【簿記3級】「減価償却(定額法)」の仕訳・問題の解き方について徹底解説します!

簿記3級

「減価償却」の問題は簿記3級では第1問の仕訳の問題、第3問決算の問題でよく出題されます。

3級で出題される論点自体は基礎的な論点のため、慣れてしまえばそこまで難しくはないのですが、簿記2級以上でより応用的な論点が出題されるため、簿記3級で考え方や解き方をしっかりマスターすることが重要になります。

本記事では、減価償却(定額法)の仕訳の意味から、解き方のポイント、簿記検定の出題についても解説しています。

「減価償却」とは?

「減価償却」の仕訳は?

簿記検定ではどのように出題される?

減価償却とは? 「定額法」について解説!

減価償却の定義

ポイント

減価償却
土地を除く、建物・備品・車両等の有形固定資産の時間の経過に伴う価値の減少を金額で表したもの。

例えば、新車を購入したとして、3年後も5年後も車の価値が買った時のまま変わらないわけではなく、当然使っているうちに老朽化等でだんだんと価値が目減りしていきます

この時、資産の価値が時間の経過に伴って減少していくことを表したのが減価償却になります。

なお、土地は使っても老朽化するわけではなく、時間の経過で価値が目減りしないので減価償却は行いません。

減価償却の「定額法」とは?

減価償却の方法には「定額法」や「定率法」、「生産高比例法」等がありますが、簿記3級では「定額法」という方法のみが出題範囲とされています。

ポイント

定額法」:
毎期一定金額ずつ償却を行っていく(資産の価値を目減りさせる)方法。

まずは、下記の例題(Q1~Q3)を考えてみましょう。

聞かれている内容は簿記3級でよく出題される内容を単純化したものですが、ただの算数だと思って考えてみましょう

例題

  • 期首(R1.4.1)に1,000,000円の新車を購入した。
  • 車の寿命は5年。
  • 5年後にはその車の価値が100,000円まで目減りする

Q1:1年ごとにいくらずつ価値が目減りしていくでしょうか?

答えは、購入価額1,000,000円から5年後に残る価値100,000円を除いた、900,000円を寿命5年で割ればいいですね。

A1:(購入価額1,000,000円-5年後に残る価値100,000円)÷寿命5年=180,000円(1年で目減りする金額)

また、「÷5」は「×0.2」(=1÷5)と同じなので、下記のようにすることもできます。
(購入価額1,000,000円-5年後に残る価値100,000円)×0.2180,000円(1年で目減りする金額)

Q2:購入から1年6ヵ月経過した時(R2.9.30)のこの車の価値(計算上の価値)はいくらでしょうか?

これは、購入価額から、先ほど求めた1年で目減りする金額180,000円を1年6ヵ月分(=1.5年分)引いてあげれば求めることができます。

A2:購入価額1,000,000円-(180,000円/年×1.5年)=730,000円(R2.9.30の車の価値)

Q3:購入から1年6ヵ月経過した時(R2.9.30)にこの車を800,000円で売却したらいくら売却損益が出るでしょうか?

これは、売却価額からQ2で求めたR2.9.30の車の価値を引けばいいので簡単ですね。

A3:売却価額800,000円-R2.9.30の車の価値730,000円=70,000円(売却益)

わざわざ仕訳を書かなくても問題を解けますね。

このように、(特に定額法の)減価償却はあまり難しく考えずに、算数だと思って解いてみると意外とすんなり理解できたりします。

後ほど説明しますが、時系列をタイムテーブルで整理すると問題が解きやすくなります

ポイント

減価償却費の問題はシンプルに算数だと思って解いてみる

「定額法」の減価償却費の計算式

上記の例題の用語を簿記の用語に置き換えると次のようになります。

簿記検定では下記の用語で出題されますので、用語を覚えておきましょう。

ポイント
  • 購入価額(1,000,000円):「取得原価
  • 寿命(5年):「耐用年数
  • 1÷寿命(0.2):「償却率
  • 寿命が来た時に残る価値(100,000円):「残存価額
  • 毎年目減りしていく価値(180,000円):「減価償却費
  • ある時点までに目減りした価値の累計(180,000円/年×1.5年):「減価償却累計額
  • ある時点の資産の価値(730,000円):「帳簿価額

なお、上記でいう「価値」とは、あくまで「計算上の価値」であって、市場価格(市場での価値)やいくらで売却できるかとは無関係なので注意が必要です。

以上から、定額法の減価償却費は次の式で計算できます。

ポイント

定額法の減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数(または×償却率)

耐用年数・残存価額は、実務では税法で定められている法定耐用年数・残存価額を使うことが多いです。
簿記検定では通常、問題文に指示がありますので指示に従いましょう。

減価償却(定額法)の仕訳を確認しよう!

減価償却の意味がイメージできたところで、仕訳を確認してみましょう!

ここでは、上記の例題(Q1~Q3)を使って、①取得時(R1.4.1)、②期末時(R2.3.31)、③売却時(R2.9.30)の3つの処理を解説していきたいと思います。

先に、仕訳のポイントを説明すると次の通りです。

ポイント
  • 減価償却の記帳方法には「間接法」と「直接法」がある(簿記検定での出題頻度は圧倒的に「間接法」が多い)。
  • 「間接法」では「減価償却累計額」勘定を用いるが、「直接法」では「減価償却累計額」勘定は使わない。
  • 「間接法」では「資産勘定(「車両運搬具」等)-減価償却累計額」が帳簿価額を表すが、「直接法」では「資産勘定そのもの」が帳簿価額を表す

なお、「直接法」は簿記2級の出題範囲であり、簿記3級は「間接法」のみの出題ですが、説明の便宜上ここでは両方説明しています。

また、減価償却の計算方法には「定額法」(毎期の減価償却費が一定)以外にも「定率法」や「生産高比例法」等がありますが、簿記3級は「定額法」のみの出題なので、「定額法」を前提として説明しています。

①取得時の仕訳(R1.4.1)

1,000,000円の車を購入したので次のようになります。

借方金額貸方金額
車両運搬具1,000,000現金1,000,000

なお、購入時は取得価額=帳簿価額となっています。

②期末時の仕訳(R2.3.31)

「間接法」(簿記3級)と「直接法」(簿記2級)それぞれの方法での仕訳を解説していきたいと思います。

「間接法」による仕訳(簿記3級)

ポイント

「間接法」:

資産勘定(「車両運搬具」等)と「減価償却累計額」勘定を別建てにして、帳簿価額を資産勘定から「減価償却累計額」勘定を控除して計算する方法。

Q1で計算した通り、毎年の減価償却費は180,000円です。

借方金額貸方金額
減価償却費180,000減価償却累計額180,000
ポイント
  • 減価償却費」:資産の価値が時間の経過により目減りしたことを表す費用。
  • 減価償却累計額」:「資産をマイナスする勘定」を表す。(負債ではなく「マイナスの資産」。このような勘定を「評価勘定」という。)
    取得時点からの「減価償却費」の累計が「減価償却累計額」になる。

取得時点から今までで資産の価値が累計でこれだけ目減りしていますよ」というのを表すのが、この「減価償却累計額」勘定です。

ここでは、①の仕訳によって、「車両運搬具」(資産)が1,000,000円計上されているので、ここから「減価償却累計額」(マイナスの資産)180,000円を除いた820,000円が期末時点の帳簿価額(計算上の車の価値)となります。

R2.3.31の車両運搬具の帳簿価額=「車両運搬具」1,000,000円-「減価償却累計額」180,000円=820,000円

「減価償却累計額」勘定は「マイナスの資産」であるため、貸借対照表では借方側、資産勘定(「車両運搬具」等)の下にマイナスで記載します。

また、「減価償却費」勘定を「車両運搬具減価償却費」、「減価償却累計額」勘定を「車両運搬具減価償却累計額」とすることがありますが、表記の問題だけで意味は同じです。

簿記検定の問題では勘定科目の指定があるので、指示があった勘定科目名を使います。

「直接法」による仕訳(簿記2級)

ポイント

「直接法」:
「減価償却累計額」勘定を用いないで、直接、資産勘定(「車両運搬具」等)を減らす処理。

借方金額貸方金額
減価償却費180,000車両運搬具180,000

この場合でも、①購入時に計上した「車両運搬具」1,000,000円から上記の「車両運搬具」180,000円を控除した820,000円が期末時点の帳簿価額(計算上の車の価値)となります。

なぜ「減価償却累計額」勘定を使う? (「間接法」のメリット)

「間接法」、「直接法」いずれの方法でも帳簿価額は同じになります。(上記だと820,000円)

イメージ的には、車の価値が目減りした分、直接「車両運搬具」勘定を減らす「直接法」の方が理解しやすいと思うのですが、なぜ「間接法」ではわざわざ「減価償却累計額」勘定を使うのでしょうか?

理由は、次の通りです。

ポイント

「減価償却累計額」勘定を使う理由(間接法のメリット):

「間接法」では資産勘定が取得原価を表すので、会社が資産にいくら投資したか(資産の購入価額がいくらか)が一目でわかる。

「直接法」だと、期末時点で「車両運搬具」勘定が820,000円になっており、これだけだと購入価額がいくらなのかがわかりませんが、「間接法」だと「車両運搬具」勘定は1,000,000円のままなので、購入価額は「車両運搬具」勘定を見れば一目でわかりますね。

会社がどのくらいの規模で投資を行っているかは重要な情報なので、購入価額と減価償却累計額を相殺せずに別々で表示しようというのが「間接法」の目的になります。

③売却時の処理(R2.9.30)

こちらも、「間接法」(簿記3級)と「直接法」(簿記2級)それぞれの方法で解説していきます。

「間接法」による仕訳(簿記3級)

前期末時点(R2.3.31)での貸借対照表は下記の通りとなっています。

<前期末時点(R2.3.31)での貸借対照表>

  • 車両運搬具(借方):1,000,000円
  • 減価償却累計額(貸方):180,000円

売却したのはR2.9.30なので、まず、R2.4.1~R2.9.30の6ヵ月分の減価償却費の計上が必要になります。

6か月分の減価償却費:180,000円/年×6ヵ月/12ヵ月=90,000円

借方金額貸方金額
減価償却費90,000減価償却累計額90,000
改めて売却時点(R2.9.30)の貸借対照表を整理すると下記の通りとなっています。

<売却時点(R2.9.30)の貸借対照表>

  • 車両運搬具(借方):1,000,000円
  • 減価償却累計額(貸方):270,000円

この時、下記の通り帳簿価額は730,000円で、Q2の解答と同じになります。

R2.9.30の車両運搬具の帳簿価額=「車両運搬具」1,000,000円-「減価償却累計額」270,000円=730,000円

これを800,000円で売却するので仕訳は次のようにします。

  • 売却によって車はなくなるので、「車両運搬具」を貸方に持ってきて消してやる。
  • また、「減価償却累計額」は「車両運搬具」とセットなので、こちらも借方に持ってきて消してやる。
  • 貸借差額が車両売却損益。
借方金額貸方金額
現金800,000車両運搬具1,000,000
減価償却累計額270,000車両売却益70,000

車両売却益はQ3の解答と同じになります。

「直接法」による仕訳(簿記2級)

前期末時点(R2.3.31)での貸借対照表は下記の通りとなっています。

<前期末時点(R2.3.31)での貸借対照表>

  • 車両運搬具(借方):820,000円

売却したのはR2.9.30なので、まず、R2.4.1~R2.9.30の6ヵ月分の減価償却費の計上が必要になります。

6か月分の減価償却費:180,000円/年×6ヵ月/12ヵ月=90,000円

借方金額貸方金額
減価償却費90,000車両運搬具90,000
改めて売却時点(R2.9.30)の貸借対照表を整理すると下記の通りとなっています。

<売却時点(R2.9.30)の貸借対照表>

  • 車両運搬具(借方):730,000円

また、「直接法」の場合、資産勘定(「車両運搬具」)は帳簿価額を表します

そのため、車の帳簿価額は730,000円で、こちらもQ2の解答と同じになります。

これを800,000円で売却するので仕訳は仕訳は次のようにします。

  • 売却によって車はなくなるので、「車両運搬具」を貸方に持ってきて消してやる。
  • 貸借差額が車両売却損益。
借方金額貸方金額
現金800,000車両運搬具730,000
車両売却益70,000

こちらも、車両売却益はQ3の解答と同じになります。

「間接法」と「直接法」の比較

勘定科目で見た時に、「間接法」と「直接法」を比較すると次の通りとなります。

間接法直接法
資産勘定 取得価額帳簿価額
減価償却費「間接法」でも「直接法」でも意味、計上される額は同じ
資産勘定-減価償却累計額帳簿価額

定額法では、取得価額を使って減価償却費を計算します。

「間接法」では帳簿(決算整理前残高試算表等)に記載されている資産勘定の残高(=取得原価)を使って問題を解くことが多いのでしっかり覚えておきましょう!

減価償却の問題の解き方:タイムテーブルを使いこなそう!

間接法でも直接法でも冒頭の例題の解答と帳簿価額や売却益が同じになるね。

仕訳をすべて書かなくても解答は導き出せるんだね。

仕訳の解説のところで確認したように、冒頭の例題(Q1~3)を仕訳を使わないで解いても、仕訳を積み上げて解いても、解答(減価償却費や帳簿価額、売却益)は同じになります

ということは、減価償却費の問題は仕訳を全部書かないと解けないわけではなく、「いつ資産を取得して減価償却費を何年分計上したか」等、時系列をしっかり整理できていれば解答が導けることになります。

とはいっても、頭の中だけで時系列を整理しようとすると混乱するので、問題を解くときは下記のようなタイムテーブルを書くことをおすすめします。

冒頭の例題(Q1~3)をタイムテーブルに落とし込むと次のようになります。

例題

  • 期首(R1.4.1)に1,000,000円の新車を購入した。
  • 車の耐用年数は5年(償却率は1÷5年=0.2)
  • 残存価額は100,000円
  • R2.9.30に車を800,000円で売却。

減価償却費(年):(取得価額1,000,000円-残存価額100,000円)÷5年(または×0.2)=180,000円

なお、タイムテーブルを作成するポイントは次の通りです。

ポイント
  • タイムテーブルに取得日期末日売却日を記載。
  • タイムテーブルに書き込む金額はそれぞれの時点の帳簿価額各期間の減価償却費だけでOK。
  • 減価償却累計額は各期間の減価償却費の合計で求める。

改めて、タイムテーブルを見ながら仕訳を見てみます。

タイムテーブルのどこの数字が仕訳につながるか確認してみましょう。

間接法
借方金額貸方金額
①取得時車両運搬具1,000,000現金1,000,000
②期末時減価償却費180,000減価償却累計額180,000
③売却時
減価償却費90,000減価償却累計額90,000
現金
減価償却累計額
800,000
270,000
車両運搬具
車両売却益
1,000,000
70,000
直接法
借方金額貸方金額
①取得時車両運搬具1,000,000現金1,000,000
②期末時減価償却費180,000車両運搬具180,000
③売却時
減価償却費90,000車両運搬具90,000
現金
800,000
車両運搬具
車両売却益
730,000
70,000

問題文からタイムテーブルタイムテーブルから仕訳がスムーズに作れるでしょうか?

上記を参考に自分なりの書き方をマスターしておきましょう!

簿記検定で出題される「減価償却」(仕訳・精算表の問題など)

簿記3級では、減価償却の問題は、第1問の仕訳の問題、第3問の決算の問題(精算表の問題等)いずれでもよく出題されます。

問題を解くポイントは次の2点です。

ポイント
  1. 過年度に取得した資産に関する減価償却費の問題はタイムテーブルを書いて整理する
  2. 第3問では取得原価に関する情報は決算整理前残高試算表にあることが多いので、決算整理前残高試算表をよく確認する

第1問の問題でよくあるのですが、減価償却の問題では「4年前の期首に取得した資産を当期に売却した」のように、過年度に取得した資産について当期の処理を聞かれることが多々あります。

この時に、過去から遡って仕訳を積み上げてもいいのですが、時間がかかったり、時系列をちゃんと理解していないと仕訳を切る回数(減価償却費・減価償却累計額を計上する回数)を間違えたりします。

そのため、ややこしい問題ほど、タイムテーブルを使って整理した方が早く答えにたどり着くことが多いと思います。

ぜひ、上記のタイムテーブルの説明を参考に、タイムテーブルでも問題が解けるようにしておいてください。

また、第3問の決算の問題では、取得原価が問題文自体には記載されておらず、決算整理前残高試算表から取得原価の情報を取ってこないといけないことが多いです。

「間接法」の時に決算整理前残高試算表に計上されている有形固定資産(「車両運搬具」等)の残高は取得原価を表しているということを覚えておきましょう。

「減価償却」まとめ

「減価償却」の処理は理解できたでしょうか?

簿記3級では、償却方法が「定額法」(毎期の減価償却費が一定)という基本パターンのみの出題となっていますが、簿記2級では「定率法」や「生産高比例法」など、毎期の減価償却費の金額が一定ではない償却方法が出題されます。

とはいえ、基本的な減価償却の考え方自体は3級の内容から大きく変わらないので、3級の内にしっかり基礎を固めておきましょう!

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