以前、簿記3級の出題範囲・配点について確認しましたが、続いて簿記2級の出題範囲・配点を確認してみましょう!
3級同様、ここではざっくり「だいたいこんな感じの問題が出るんだな」というイメージだけ持ってもらえれば大丈夫です!
学習がある程度進んだら、再度当記事を読み返して試験問題をイメージしてみましょう。
なお、以前簿記3級について記載した記事と内容が重複する部分がありますので、3級の記事を読まれた方は該当部分は読み飛ばしていただいて構いません。(「簿記3級の記事と共通」と記載しています。)
簿記2級の配点・出題範囲は?
新試験の出題範囲の変更は?
対策はどうすればいい?
簿記2級の配点・出題範囲を確認してみよう!
簿記2級の出題範囲
簿記2級の2021年度の出題範囲は簿記 出題区分表 | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)から確認できます。
商業簿記は3級の内容を基礎としてより発展的な内容が範囲になっているほか、本支店会計や連結会計など、2級で初めて習う論点も含まれています。
また、工業簿記は内容的には2級でほぼ全ての論点を網羅していることがわかります。
なお、2022年度に出題範囲の変更が予定されており、暫定版の出題区分表が公表されています。
こちらについては、確定版が公表されたらアナウンスしたいと思います。
2021年度試験の出題範囲の変更について
新しく学習を始める方はあまり意識する必要はありませんが、主に「収益認識に関する会計基準」という新しい会計基準の導入に伴い、一部試験範囲が改訂されています。
改訂されたといっても、2級・3級については、2021年度試験では出題範囲は拡大しておらず、新たに学習しなければいけない項目も追加されていないことから、すでに学習を始めていて2021年度に試験を受けられる方はこれまでの教材で対応可能です。
ただし、2021年度試験では一部、従来から出題範囲に含まれていた項目が削除されています。
ここでは、2級の試験範囲に関する部分を簡単に紹介したいと思います。(難しいと思った方は読み飛ばしていただいて構いません。)
下記6点が簿記2級の2021年度の主な出題範囲の変更ですが、2021年度はどちらかというとマイナーチェンジで、あまり学習に影響はないでしょう。
一方で、2022年度以降は「収益認識に関する会計基準」が2級の出題範囲にも入ってきますので注意が必要です。
- 「商品販売時の送料を買手負担とする取引」の削除(簿記3級の記事と共通、2022年度以降は1級で出題)
- 「分記法による売買取引」の削除(簿記3級の記事と共通)
- 「売上割戻(売上割戻引当金)」「売上割引」の削除(2022年度以降は売上割戻は2級で、売上割引は1級で出題)
- 「返品調整引当金」の削除(2022年度以降は「返品権付き販売」として1級で出題)
- 「消費税の税込方式」の削除
- 「作業くず、副産物」の削除(2022年度以降は1級で出題)
「商品販売時の送料を買手負担とする取引」の削除(簿記3級の記事と共通、2022年度以降は1級で出題)
従来、商品販売にともない売手が送料を支払った場合には、①送料について売手の負担(売手にとって費用)とする処理と、②買手の負担(売手にとって売掛金または立替金)とする処理の2つの方法が出題されていました。
ところが、「収益認識に関する会計基準」では、商品販売に付随する、「商品を買手に出荷・配送する」という活動をどう捉えるかによって処理が変わってきます。(詳細は省略しますが、具体的には「履行義務」という考え方を用います。)
「履行義務」の考え方によって、いろいろ処理のパターンがあるのですが、2級・3級ではややこし過ぎるので、出荷・配送活動を履行義務として識別しない単純な方法を採用し、「売手が支払う送料は、売手の費用として処理する」という方法(①の方法)のみに出題が絞られました。
なお、この履行義務という考え方は2022年度以降は1級での出題が予定されています。
「分記法による売買取引」の削除(簿記3級の記事と共通)
商品売買取引の記帳方法には、①分記法(「商品」勘定と「商品売買益」勘定を使用する記帳方法)と②三分法(「繰越商品」勘定と「仕入」勘定と「売上」勘定を使用する記帳方法)の2つの方法があります。
これまでの検定試験でも分記法はあまり出題されておらず、実務上も三分法を使用することが多いため、簿記検定受験者の負担の軽減を考慮して、①の分記法による商品売買が出題範囲から削除されました。
「売上割戻(売上割戻引当金)」「売上割引」の削除(2022年度以降は売上割戻は2級で、売上割引は1級で出題)
- 売上割戻:リベートともいいます。商品をたくさん買ってくれたら、お礼として「購入価額の〇%」といった形で、買ってくれた分に応じて売上代金を一部返戻するといった商慣行です。
- 売上割引:掛代金を早く返済してくれたら、その分一部掛代金を減額してあげるという商慣行です。
従来は、売上を計上した後で、売上割戻があったら売上のマイナスとして別で計上したり、売上割引があったら営業外費用として別で計上する処理をしていました。
また、売上割戻の場合、売上割戻の金額を予め見積もって引当金を設定する処理(売上割戻引当金)をすることもありました。
要するに、従来は売上の処理と売上割戻・売上割引の処理は別立てにしていたということです。
ところが、「収益認識に関する会計基準」では、売上割戻は、今後行う予定の売上割戻の金額を見積もって、売上時に最初から売上の金額を減額する処理を行います。
(詳しい説明は省略しますが、売上割戻のように、当初決めた価格から金額が変動するかもしれないような価格を「変動対価」といいいます。今は覚えなくて大丈夫です。)
売上割引も基準上明確には記載されていませんが、売上割戻同様の処理をすると思われます。
また、今後は売上割戻は「変動対価」として金額を見積もって処理するので、売上割戻引当金も廃止されました。
2021年度の2級の試験では、「収益認識に関する会計基準」は出題範囲から除かれていますので、売上割戻(売上割戻引当金)・売上割引に関する処理が2級の出題範囲から削除されました。
ただし、2022年度以降は「変動対価」として売上割戻は2級の出題範囲には含まれますので、2022年度の試験を受験される方は注意が必要です。
また、売上割引は2022年度以降は1級の出題範囲とされる予定です。
なお、2021年度は仕入割戻や仕入割引など仕入側の処理は従来通り2級の範囲ですが、2022年度以降は仕入割引は売上割引と併せて1級の出題範囲とされる予定です。
「返品調整引当金」の削除(2022年度以降は「返品権付き販売」として1級で出題)
「未使用であれば1か月以内なら返品可能」のような条件を付けて、あらかじめ一定数の返品を見込んで商品を販売することがあります(これを「返品権付き販売」といいます)。
このような場合、従来は、返品によって減少する利益部分の金額を見積もって引当金を計上する処理(返品調整引当金)を行っていました。
ところが、「収益認識に関する会計基準」では、上記のような返品権付き販売は、売上割戻同様「変動対価」に該当し、今後発生する予定の返品の金額を見積もって、売上時に最初から売上・売上原価の金額を減額する処理を行います。
したがって、今後は「変動対価」として金額を見積もって処理するので、売上割戻引当金同様、返品調整引当金は廃止されました。
2021年度の2級の試験では、「収益認識に関する会計基準」は出題範囲から除かれていますので、「返品権付き販売」の処理が2級の出題範囲から削除されました。
なお、「返品権付き販売」の処理は少し処理がややこしいので、2022年度以降は1級の範囲となる予定です。
「消費税の税込方式」の削除
消費税の処理には、①税抜方式と②税込方式があります。
例:100円で商品を販売して対価を現金で受け取った。消費税額は10円である。
<税抜方式>
(借方)現金 110円 (貸方)売上 100円
(貸方)仮受消費税 10円
<税込方式>
(借方)現金 110円 (貸方)売上 110円
従来はどちらも認められていたのですが、「収益認識に関する会計基準」では、消費税の10円部分は本来買手が国や地方に直接消費税を納めないといけないのを、売手が単に代行して徴収しているだけなので、売上に含めることができなくなり、②税込方式は認められなくなりました。
したがって、税込方式は出題範囲から削除されました。
「作業くず、副産物」の削除」(2022年度以降は1級で出題)
工業簿記の範囲で、どちらかというとマイナーな論点です。
作業くず、副産物いずれも、製品を作る際に製品と一緒にできるもので価値のあるものをいいます。
処理としては現状は、売却価値を見積もって製造原価から控除される方法が採られています。
ところが、「収益認識に関する会計基準」の適用によって、実態に応じて売却時に収益を計上する方法も追加されます。
こちらも2級で出題するにはややこしすぎるため、2級の出題範囲からは削除されました。
なお、2022年度以降は1級の範囲とされる予定です。
【新試験対応】簿記2級の大問ごとの配点と出題内容
新試験における簿記2級の配点・出題内容は次の通りです。
試験時間は統一試験(ペーパー試験)、ネット試験ともに90分、合格基準は70%(70点)です。
簿記2級は問題数が多く時間も比較的タイトなので、自分なりの問題の解き方をマスターし効率的に問題を解き進める必要があると思います。
なお、第1問~第3問は商業簿記、第4問~第5問は工業簿記の出題となっています。
大問 | 配点 | 目標点数※ | 出題内容 |
---|---|---|---|
第1問 | 20点 | 16点 (80%) | 仕訳 5題 (従来の1問目) |
第2問 | 20点 | 12点 (60%) | 1つの論点を系統的に理解しているか 標準的連結、連結精算表、連結財務諸表、勘定記入、空欄補充、株主資本等変動計算書 (従来の2問目) |
第3問 | 20点 | 14点 (70%) | 個別決算(損益計算書、貸借対照表、本支店会計) (従来の3問目) |
第4問 | 28点 | 21点 (75%) | (1)仕訳 3題 (2)財務諸表作成、部門別原価計算、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算(勘定記入・損益計算書) |
第5問 | 12点 | 8~9点 (70~80%) | 標準原価計算(差異分析)、CVP分析、直接原価計算 |
配点・出題内容の出典:日商簿記書籍 読者様徹底サポート特設ページ | 資格本のTAC出版書籍通販サイト CyberBookStore (tac-school.co.jp)
※目標点数は筆者が独自に設定
第1問の内容の解説
商業簿記の範囲の標準的な仕訳×5問で20点となっています。
単純に1問あたり4点なので、1問1問がけっこう大きいと思います。
3級と同様、仕訳は点数の稼ぎどころですのでしっかり得点しましょう。
最終的には8割得点できるといいと思います。
第2問の内容の解説
連結会計の範囲や勘定記入など、苦手に感じている方も多い分野だと思います。
連結会計の問題は、仕訳のもととなるタイムテーブルを書いたり、仕訳を集計したりと慣れていないと時間がかかりやすい割に、途中でミスをするとなし崩し的に間違えることがあり、部分点を狙いにくい傾向があります。
ただし、連結会計の問題はそこまでひねった問題は出ないので、ある程度時間を確保して落ち着いて解答すれば確実に得点できると思います。
また、連結会計の問題は最終数値が求めらているだけの場合は、必ずしもすべての仕訳を切る必要はなく、タイムテーブルから解答を拾えるようにしておくといいと思います。
また、勘定記入系の問題は問題のバリエーションが多く、文章量も多くなる傾向があるので、問題文の読み込みに時間がかかりますが、落ち着いて解答すれば部分点は狙えると思います。
第2問ではなんとか耐えて6割程度得点できるといいと思います。
第3問の内容の解説
通常、中問や小問はありません。
決算整理前残高試算表等が与えられ、決算処理を通じて決算整理後残高試算表や精算表、貸借対照表・損益計算書等を完成させます。
簿記3級の第3問同様、一つ一つの決算処理の仕訳自体は難しいものはありませんが、複数の仕訳を起票しないといけないので、仕訳を積み重ねてそれを集計するテクニックが求められます。
また、最終数値さえ回答できればいいので、統一試験のように問題用紙にメモできる場合、必ずしもすべて仕訳を切る必要はなく、決算整理前残高試算表等の勘定科目の横に「+100,000」のように金額をメモしていく解き方もあると思います。
多少の勘違いや集計ミスはあると思うので、部分点を狙って7割程度得点できるといいと思います。
第4問の内容の解説
構成は工業簿記の範囲の仕訳×3問(12点)と原価計算系の問題(16点)となっています。
仕訳は内容的には平易なものが多いので確実に3問得点できるといいと思います。
一方で、原価計算系の問題は問題のバリエーションが多く、勘定連絡図を書いて情報を整理するテクニックが必要なので、苦手な方も多いかもしれません。
なんとか原価計算系の問題では6割程度得点できるといいと思います。
よって、仕訳で12点、原価計算系の問題で9点の21点を目標にできるといいと思います。
第5問の内容の解説
標準原価計算(差異分析)、CVP分析、直接原価計算などの原価管理・分析系の問題が出題されます。
小問が3~4問出題されることが多いようです。
原価計算系の問題と違って問題がパターンなので比較的得点しやすいと思います。
できれば7割~8割程度得点できるといいと思います。
問題を解く順番は?
問題を解く順番は、個人的には下記がいいと思います。
- 最初に得点しやすい第1問と第4問前半の仕訳(計8題)を解く(15分程度)
- 次に、比較的パターンで解きやすい第5問を解く(15分程度)
- その次に、部分点の取りやすい第3問を解く(20分程度)
- 第2問と第4問後半は回答しやすい方を先に解く(各20分×2)
ポイントとしては次です。
- 得点しやすい問題から解いて気持ちを落ち着ける
- 難しい問題にこだわらず、少し考えて解答の方針が立たなかったら次の問題にいく
- 全部解けなくても部分点を狙いにいく
簿記検定の予想問題を見てみよう!(簿記3級の記事と共通)
新試験の出題形式については上記で解説してきましたが、簿記検定は2020年12月より2級と3級にネット試験が追加され、従来からの統一試験(ペーパーテスト)も2021年6月試験(第158回)より出題形式が大きく変更されています。
したがって、過去問は問題単体の参考にはなるものの、新試験の出題形式を把握するには適していません。
また、2021年6月試験から問題用紙・計算用紙ともに持ち帰りができなくなっており、実際に出題された試験問題も確認することができなくなっています。
ただし、各予備校が出している予想問題がありますので、こちらで大まかな問題の傾向を確認することができます。
今は難しく感じると思いますが、学習を始める前に試験問題を見ておくとゴールがはっきりするので、ざっとでいいので問題の雰囲気を確認してみましょう!
<予想問題>
教育機関が公表した日商簿記検定試験 新試験の予想問題について | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)
今後の学習のポイントを確認しよう!
以上を踏まえると、今後の学習で意識しないといけないポイントは次の5点です。
- 【第1~5問共通】テキストレベルの仕訳を完璧にマスターする。
- 【第2問】連結会計の問題はタイムテーブルの書き方をマスターし、タイムテーブルから解答を拾えるようにしておく。また、勘定記入の問題はできるだけ多くのパターンの問題に触れておく。
- 【第3問】3級同様、決算整理仕訳のパターンを覚える。また、必ずしもすべて仕訳を切る必要はなく、短時間で金額を集計できるよう自分なりの集計方法をマスターする。
- 【第4問】原価計算系の問題は勘定連絡図の書き方をマスターする。
- 【第5問】原価管理・分析系の問題は問題のパターンと解き方を覚える。
2級は3級に比べて単に学習範囲が広がるだけでなく、問題を素早く正確に解く力が求められています。
そのためには、テキストを理解して仕訳を覚えるだけでなく、問題を解くためのツール(連結会計のタイムテーブルや原価計算の勘定連絡図等)や問題の解き方をマスターする必要があります。
テキストの学習が終わったら、できるだけ多く試験形式の問題に当たって問題に慣れ、本番の時間感覚を身に付けておきましょう!
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