- 簿記3級の勉強をこれから始めるので、出題内容や問題形式を一から教えて!
- 2021年度試験で変更があった出題範囲は?何が変わった?
- 新試験の簿記3級の勉強のポイントを知りたい!
簿記検定は2020年12月より2級と3級にネット試験が追加され、従来からの統一試験(ペーパーテスト)も2021年6月試験(第158回)より出題形式が大きく変更されています。
一方で、これから簿記3級の勉強を始める方で「そもそも簿記3級ってどんな試験?」と思っている方や、
すでに簿記3級の学習を始めている方で「実はまだ新試験で何が変わったか知らない…」という方もいると思います。
しかし、どんな試験でも同じですが、「こんな問題が解けるようになればいいんだ」とゴールが明確になっているのとそうでないのでは、勉強の仕方が大きく変わってきます。
また、従来の試験とは出題形式が大きく異なるので、新試験に向けて勉強を始めるなら、出題形式の確認は必須です。
どんな試験なのか把握せずに闇雲に勉強してもなかなか合格するのは難しいです。
この記事では、これから新試験の簿記3級を受ける方に向けて、一から丁寧に簿記3級の出題範囲や出題形式を解説するとともに、今後の学習のポイントをまとめています。
この記事を読めば、まだ簿記の知識がない方でも、新試験の簿記3級の出題範囲や出題形式、今後の学習ポイントがわかります。
なお、2級や1級を含めた簿記検定の全体像、それぞれの級の勉強時間の目安、ネット試験について知りたい方は下記の記事を参考してください。
簿記3級の出題範囲は商業簿記全般に渡る基礎的な内容
簿記3級の2021年度の出題範囲はこちらから確認できます。
今後徐々に学習していくので今は出題範囲についてあまり意識する必要はありませんが、日常の取引における基本的な処理や決算処理、帳簿や伝票など、商業簿記全般に渡る基礎的な内容が範囲となっています。
簿記3級は基本的な内容が中心なので、あまり怖がらずチャレンジしてみましょう。
なお、2022年度に出題範囲の変更が予定されており、暫定版の出題区分表が公表されています。
こちらについては、確定版が公表されたらアナウンスしたいと思います。
簿記3級の2021年度試験の出題範囲は「縮小」
新しく学習を始める方はあまり意識する必要はありませんが、主に「収益認識に関する会計基準」という新しい会計基準の導入に伴い、一部試験範囲が改訂されています。
「収益認識に関する会計基準」とは、売上やその他の収益の計上方法を新たに定めた基準で、実務に大きな影響を与えています。
改訂されたといっても、2級・3級については、2021年度試験では出題範囲は拡大しておらず、新たに学習しなければいけない項目も追加されていません。
そのため、すでに学習を始めていて2021年度に試験を受けられる方はこれまでのテキストで対応可能です。
ただし、出題形式は変わっているので、過去問を本番の模擬試験として使うのはおすすめしません。
なお、2021年度試験では一部、従来から出題範囲に含まれていた項目が削除されています。
ここでは、3級の試験範囲に関する部分を簡単に紹介したいと思います。
下記2点が簿記3級の2021年度の主な出題範囲の変更ですが、どちらかというとマイナーチェンジで、あまり学習に影響はないでしょう。
<簿記3級の2021年度の主な出題範囲の変更>
- 「商品販売時の送料を買手負担とする取引」の削除(2022年度以降は1級で出題)
- 「分記法による売買取引」の削除
下記で出題範囲の変更点2点を解説します。まだ簿記の学習を始めていない方や難しいと思った方は読み飛ばしていただいて構いません。
「商品販売時の送料を買手負担とする取引」の削除(2022年度以降は1級で出題)
従来、商品販売にともない売手が送料を支払った場合には、①送料について売手の負担(売手にとって費用)とする処理と、②買手の負担(売手にとって売掛金または立替金)とする処理の2つの方法が出題されていました。
ところが、「収益認識に関する会計基準」では、商品販売に付随する、「商品を買手に出荷・配送する」という活動をどう捉えるかによって処理が変わってきます。(詳細は省略しますが、具体的には「履行義務」という考え方を用います。)
「履行義務」の考え方によって、いろいろ処理のパターンがあるのですが、2級・3級ではややこし過ぎるので、出荷・配送活動を履行義務として識別しない単純な方法を採用し、「売手が支払う送料は、売手の費用として処理する」という方法(①の方法)のみに出題が絞られました。
「収益認識に関する会計基準」が絡んでくるので、②買手の負担とする処理は簿記3級の出題範囲から削除されました。
なお、この履行義務という考え方は2022年度以降は1級での出題が予定されています。
「分記法による売買取引」の削除
商品売買取引の記帳方法には、①分記法(「商品」勘定と「商品売買益」勘定を使用する記帳方法)と②三分法(「繰越商品」勘定と「仕入」勘定と「売上」勘定を使用する記帳方法)の2つの方法があります。
これまでの検定試験でも分記法はあまり出題されておらず、実務上も三分法を使用することが多いため、簿記検定受験者の負担の軽減を考慮して、①の分記法による商品売買が出題範囲から削除されました。
①分記法は使用頻度が低いため出題範囲から削除されました。
【新試験対応】簿記3級の大問ごとの配点と出題内容
新試験における簿記3級の配点・出題内容は次の通りです。
統一試験(ペーパー試験)、ネット試験ともに試験時間は60分、合格基準は70%(70点)です。
簿記3級は全体としてテキストや問題集レベルの基本問題をしっかり解けるようになっていれば、十分合格圏内に入ることができるような問題構成になっています。
大問 | 配点 | 目標点数※ | 出題内容 |
---|---|---|---|
第1問 | 45点 | 36~39点 (80~90%) |
仕訳 15題 (従来の1問目) |
第2問 | 20点 | 12~14点 (60~70%) |
勘定記入・補助簿・適語補充 (従来の2問目と4問目) |
第3問 | 35点 | 25点 (70%) |
決算 (従来の5問目) |
配点・出題内容の出典:日商簿記書籍 読者様徹底サポート特設ページ | 資格本のTAC出版書籍通販サイト CyberBookStore (tac-school.co.jp)
※目標点数は筆者が独自に設定
各大問ごとに詳細を解説していきます。
第1問:テキストレベルの基礎的な仕訳
<第1問のポイント>
- 問題形式・配点:小問(各3点)×15問で45点
- 内容:テキストレベルの基礎的な仕訳
- 目標得点:8割~9割(36~39点)程度
小問(各3点)×15問の45点となっており、最も配点の高い大問です。
各小問は、1問1答形式でテキストレベルの基礎的な仕訳を問う問題となっています。
普段の学習で各取引の仕訳がしっかり身に付いていれば十分回答できる内容となっています。
そのため、第1問でできるだけ時間と点数を稼ぎ、最終的には8割~9割程度得点できるようになるといいと思います。
点数の稼ぎどころなので、テキストに出てくる仕訳は完璧にマスターしておきましょう。
第2問:勘定記入・補助簿・適語補充
<第2問のポイント>
- 問題形式・配点:中問が2題で20点(小問単位または空欄単位で部分点あり)
- 内容:勘定記入・補助簿・適語補充
- 目標得点:6~7割(12~14点)程度
中問が2題で20点です。小問単位または空欄単位で部分点があります。
配点としては20点と他の大問と比べるとそれほど高くないですが、勘定記入・伝票・補助簿については苦手な方も多いかと思います。
「勘定記入・伝票・補助簿」の問題は、ざっくり言うと取引を帳簿に記載する一連の流れが問われる問題です。
合格には最低でも6~7割程度得点できるようになるといいと思います。
理解ができていないと全然得点できず致命傷になる可能性もありますので、しっかり対策しておきましょう。
問題パターンとしては大きく分けて次の2つです。
<勘定記入・伝票・補助簿の問題パターン>
- 取引から総勘定元帳・伝票・補助簿等を作成させるパターン(取引→仕訳→総勘定元帳・伝票・補助簿等)
- 伝票・補助簿等から仕訳を起票、または総勘定元帳を作成させるパターン(伝票・補助簿等→取引→仕訳→総勘定元帳)
慣れていないと2.が少し難しく感じるかもしれませんが、いずれも聞かれている内容はテキスト・問題集レベルの知識です。
「取引→仕訳→総勘定元帳・伝票・補助簿」パターンは帳簿の記載方法を押さえよう
取引から総勘定元帳や伝票、補助簿を作成させるパターンです。
また、単にどの補助簿に記載されるかを回答すればいいだけの問題もあります。
問われている内容はテキスト・問題集レベルなので、総勘定元帳・伝票・補助簿等の基本的な記載方法が理解できていれば、比較的回答しやすい問題だと思います。
帳簿にはいろいろな種類がありますが、テキストに出てくる帳簿がマスターできていれば十分です。
「伝票・補助簿等→取引→仕訳→総勘定元帳」パターンは取引をイメージしよう
作成された伝票や補助簿から、取引を推定し、仕訳や総勘定元帳を作成させるパターンです。
問題を解くポイントとしては、伝票・補助簿等から取引をイメージできるかどうかです。
問題文に取引内容がすべて記載されているのではなく、伝票・補助簿等からどのような時系列でどんな取引があったかを読み取らないといけないので、1.と比べてやや応用的な問題です。
ただし、問われている内容自体は、1.と同様、テキストレベルの伝票・補助簿等の基本的な処理です。
したがって、このパターンの問題も、テキスト・問題集レベルの問題が解けるようになっていれば十分対応できると思います。
第3問:決算
<第3問のポイント>
- 問題形式・配点:大問一つで35点(通常中問や小問はないが、勘定科目単位で部分点あり)
- 内容:決算
- 目標得点:7割(25点)程度
通常、中問や小問はありません。配点35点と第1問に次いで配点が高くなっています。
決算整理前残高試算表等が与えられ、決算処理を通じて決算整理後残高試算表や精算表、貸借対照表・損益計算書等を完成させます。
決算とは年度の終わりに帳簿を締めるための処理のことです。
「決算整理」という処理を通じて、様々な決算書を作っていきます。
通常、決算整理後残高試算表や精算表、貸借対照表・損益計算書等のいくつかの勘定科目に配点されており、完答できなくても部分点がもらえます。
一つ一つの決算処理の仕訳自体は難しいものはありませんが、複数の仕訳を起票しないといけないので、仕訳を積み重ねてそれを集計するテクニックが求められます。
一つ一つの仕訳を作るだけでなく、決算に関わる勘定科目を漏れなく素早く集計しないといけません。
多少の勘違いや集計ミスはあると思うので、部分点を狙って7割程度得点できるといいと思います。
また、決算処理には主に次の2つがあり、問題文から期中の処理や前期末の処理をイメージできるかも重要なポイントです。
<決算整理の問題パターン>
- 未処理事項の処理(期中の処理漏れや誤処理について、決算時に追加計上・訂正を行うもの)
- 決算整理仕訳(期中の漏れや誤りではないが、決算で調整が必要なもの)
聞かれている決算整理がどちらのパターンか判断が必要です。
未処理事項の処理は期中の処理をイメージできるかがポイント
問題を解くポイントは、期中でどこまで処理してあって、それを踏まえて決算ではどんな仕訳を起票しないといけないか、という点です。
仕訳の内容自体は特に難しいものはありませんが、上記を理解していないと仕訳を間違ってしまいます。
期中の仕訳を踏まえて、決算の仕訳を作成しましょう。
例えば、期中に仮受金で処理していた取引について、決算で売掛金の回収額だと判明した場合、仮受金を取り崩す処理が必要です。
売掛金の回収だからといっても、現金については期中で処理済みのため決算では処理しません。
<期中の処理>
現金の受け取りを仮受金で処理。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 100 | 仮受金 | 100 |
<未処理事項の処理(正)>
決算で仮受金の内容が判明したので、期中処理で計上した仮受金を取り崩し、売掛金を減らす。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仮受金 | 100 | 売掛金 | 100 |
<未処理事項の処理(誤:よくある間違い)>
売掛金の回収だからといって、期中の処理を意識していないと、現金を再度計上してしまう。(現金は期中に計上済み)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 100 | 売掛金 | 100 |
決算整理仕訳はパターンを押さえればOK
決算整理仕訳は期中の仕訳や前期末の決算整理仕訳を前提として起票されるものなので、期中の仕訳や前期末の決算整理仕訳を具体的にイメージできるかが重要という点は未処理事項と同様です。
とはいえ、決算整理仕訳自体はパターンなので、決算整理仕訳のパターンをマスターしていれば問題自体はそこまで難しくありません。
なお、簿記3級で出題される決算整理仕訳は主に次のものです。
①現金過不足
②当座借越の振替
③商品棚卸
④貸倒見積り
⑤減価償却
⑥貯蔵品棚卸
⑦収益・費用の前受け・前払いと未収・未払い
簿記3級で出題される決算整理仕訳は限られているので、一つ一つマスターしましょう。
簿記検定の予想問題でゴールを明確にしよう!
新試験の出題形式については上記で解説してきましたが、簿記検定は2020年12月より2級と3級にネット試験が追加され、従来からの統一試験(ペーパーテスト)も2021年6月試験(第158回)より出題形式が大きく変更されています。
したがって、過去問は問題単体の参考にはなるものの、新試験の出題形式を把握するには適していません。
出題形式が変わっているので、過去問を本番の模擬試験として使うのはおすすめしません。
また、2021年6月試験から問題用紙・計算用紙ともに持ち帰りができなくなっており、実際に出題された試験問題も確認することができなくなっています。
ただし、各予備校が出している予想問題がありますので、こちらで大まかな問題の傾向を確認することができます。
今は難しく感じると思いますが、学習を始める前に試験問題を見ておくとゴールがはっきりするので、ざっとでいいので問題の雰囲気を確認してみましょう!
出題形式をつかんだり、模擬試験をするには、各予備校が出している予想問題を使いましょう。
簿記3級の学習のポイントは3点!
以上を踏まえると、今後の学習で意識しないといけないポイントは次の3点です。
<簿記3級の学習のポイント>
- 【第1~3問共通】テキストレベルの仕訳を完璧にマスターする。
- 【第2問】勘定記入・補助簿は、まずはテキストで伝票・補助簿等の記載方法を覚える(取引→仕訳→総勘定元帳・伝票・補助簿等)。慣れてきたら、テキスト・問題集で伝票・補助簿等から取引・仕訳がイメージできるようにトレーニングする(伝票・補助簿等→取引→仕訳)。
- 【第3問】どんな決算整理処理があるのかテキストで決算整理仕訳のパターンを覚える。その後、問題をできるだけ多く解いて、仕訳の積み上げや金額の集計に慣れる。
簿記3級に限らず、簿記検定では学習のメインは仕訳をマスターすることにあります。
特に、学習を始めた最初の頃は新しく覚えないといけない仕訳がたくさんあり大変に感じると思います。
「こんなにたくさん仕訳を覚えないといけないの?」と思うかもしれませんが、仕訳は無理やり暗記するというより、問題を解く中で自然に仕訳のパターンが体に染み付いてくるものです。
テキストで内容を理解したら問題集で問題を解くの繰り返しで、一つ一つ確実に仕訳をマスターしていきましょう!
これを読んだら、次の記事「簿記検定に持ち込みできる電卓とは?おすすめの電卓や基本的な使い方についても紹介します!」に進みましょう!
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